牝馬30年ぶりの金鯱賞制覇|連覇なるか-クイーンズウォークについて徹底解剖
「クイーンズウォーク」──その名はまさに「女王の歩み」を意味する。デビューからクイーンC(G3)、ローズS(G2)、金鯱賞(G2)と重賞3勝を積み重ねてきたこの黒鹿毛牝馬は、しかしG1という頂では毎回わずかに届かない。牝馬として30年ぶりとなる金鯱賞制覇という歴史的勝利を達成した一方で、5度のG1挑戦で未勝利という「G1の壁」が今も立ちはだかる。川田将雅騎手が「もともとポテンシャルの高い馬ですし、素晴らしい馬体と、素晴らしい背中をしていますので」と言い続けるこの馬の本当の実力は、どこにあるのか。3月15日の金鯱賞連覇挑戦がその答えのひとつを示す。
👑 牝馬30年ぶりの金鯱賞制覇 ── 重馬場・男馬混合で見せた底力
2025年3月16日の金鯱賞は、デシエルトが大逃げを打つ消耗戦となった。前半1000mを58.2秒という速いラップで進んだレースで、ホウオウビスケッツが直線で一旦先頭に立つ展開の中、馬場の外から力強く脚を伸ばしたのがクイーンズウォークだった。ゴール寸前でハナ差差し切り、1995年のサマニベッピン以来30年ぶりとなる牝馬の金鯱賞制覇を達成した。
「この馬にとっては良い馬場ではないと思っていました。ただ、この馬は自分で進むことを選択したので、この馬場も考慮して、気持ちを尊重しながら、という競馬に変えました。とにかく、彼女のリズムで走りながら、最後まで走り切った時に、一番前に出てくれればという思いで乗っていました」
「もともとポテンシャルの高い馬ですし、素晴らしい馬体と、素晴らしい背中をしていますので、それに見合う結果を、と思いながら、G1ではなかなか結果が出ていませんが、また、こうして良いタイトルを獲れましたので、男馬相手にもしっかりやれるところを証明してくれましたので、これから先も楽しみです」
川田騎手の「良い馬場ではないと思っていた」という言葉と「それでも勝てた」という事実は、クイーンズウォークの底力の高さを示している。良馬場の金鯱賞でどれだけの走りを見せるか──連覇挑戦となる今年の注目点はそこにある。
💛 G1・5戦の「惜敗録」── 届かなかった頂点
3歳クラシック3戦は苦汁をなめたが、ヴィクトリアマイルでは「一瞬先頭」という最も近い場面まで到達。G1の壁は依然として厚いが、中京2000mという最も合うコースへの回帰で連覇を狙う。
🌸 ヴィクトリアマイル2着 ── 一瞬先頭に立ったが、クビ差届かず
5度目のG1挑戦となった2025年ヴィクトリアマイル。4番人気(単勝8.5倍)に甘んじながらも、中団外めから直線で一気に加速。ゴール前では一時先頭に立つ場面まで到達した。しかし残り100mあたりで同厩舎のアルジーヌと馬体が接触するアクシデントが発生。立て直す間に、大外から飛んできたアスコリピチェーノ(ルメール)にクビ差交わされて2着に終わった。
「素晴らしい具合で競馬に臨めました。1600メートルにも対応してくれて、素晴らしい内容で走ってくれました」
「久しぶりのマイルにも対応してくれて、非常にいい内容で走ってくれました」
直線での接触がなければ──という惜敗だった。しかし川田騎手が「素晴らしい内容」と評したように、この日のパフォーマンス自体は最高レベルだった。「一瞬先頭」という景色を知った馬が、得意の中京2000mに戻るとき何が起きるか。
📋 全戦績 ── 11戦のキャリアを振り返る
| 日付 | 競馬場 | レース名 | 距離 | 着順 | 人気 | タイム | 上がり3F | 騎手 | 馬体重 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023/11/11 | 京都 | 2歳新馬 | 芝1800m稍 | 2着 | 1人気 | 1:50.5 | 33.6 | 川田将雅 | 518kg | ⚠出遅れ |
| 2023/12/23 | 阪神 | 2歳未勝利 | 芝1800m良 | 1着 | 1人気 | 1:48.3 | 33.7 | 川田将雅 | 520kg(-2) | ⚠出遅れ |
| 2024/02/10 | 東京 | デイリー杯クイーンC(G3) | 芝1600m良 | 1着 | 1人気 | 1:33.1 | 33.4 | 川田将雅 | 516kg(-4) | 11-11 |
| 2024/04/07 | 阪神 | 桜花賞(G1) | 芝1600m良 | 8着 | 3人気 | 1:32.8 | 34.1 | 川田将雅 | 514kg(-2) | 8-8 |
| 2024/05/19 | 東京 | 優駿牝馬・オークス(G1) | 芝2400m良 | 4着 | 4人気 | 2:24.4 | 34.7 | 川田将雅 | 522kg(+8) | 5-5-5-4 |
| 2024/09/15 | 中京 | 関西TVローズS(G2) | 芝2000m稍 | 1着 | 2人気 | 1:59.9 | 33.5 | 川田将雅 | 522kg(0) | 7-6-6-6 |
| 2024/10/13 | 京都 | 秋華賞(G1) | 芝2000m良 | 15着 | 3人気 | 1:59.6 | 36.7 | 川田将雅 | 524kg(+2) | 14-14-9-7 |
| 2025/01/25 | 小倉 | 小倉牝馬S(G3) | 芝2000m良 | 6着 | 1人気 | 1:58.7 | 36.2 | 川田将雅 | 534kg(+10) | 6-6-4-2 |
| 2025/03/16 | 中京 | 東海テレビ杯金鯱賞(G2) | 芝2000m重 | 1着 | 4人気 | 2:01.3 | 36.3 | 川田将雅 | 534kg(0) | 3-3-3-3 |
| 2025/05/18 | 東京 | ヴィクトリアマイル(G1) | 芝1600m良 | 2着 | 4人気 | 1:32.1 | 33.6 | 川田将雅 | 536kg(+2) | ⚠直線接触 |
| 2025/11/02 | 東京 | 天皇賞・秋(G1) | 芝2000m雲 | 9着 | 9人気 | 1:59.0 | 32.8 | 川田将雅 | 542kg(+6) | 7-6-6 |
🔍 レース別分析 ── キャリアの転換点を読む
1番人気(単勝3.1倍)に応え、後方11番手から上がり33.4秒の最速末脚で差し切った。この時点で「大器の片鱗」を示した一戦。続く桜花賞は8着に終わったが、クイーンCのパフォーマンスは後に評価が高まる。
秋華賞トライアルのローズSを2番人気で制覇。中京芝2000mで上がり33.5秒のレース最速を記録した。この勝利が後の金鯱賞制覇の「原点」となる。中京芝2000mという舞台が、クイーンズウォークにとって最も力を発揮できるコースであることをこのレースが示した。
ローズS優勝から直行した秋華賞。3番人気に支持されたが14-14-9-7という後方からのレースで15着に大敗。この敗戦について専門家は「レース中のアクシデントもあった」と指摘しているが、G1での壁の高さを痛感させる結果だった。続く小倉牝馬Sも6着に敗れ、「近走2連敗」という状況で臨んだのが金鯱賞だった。
近2走で秋華賞15着・小倉牝馬S6着という不振から4番人気(単勝8.2倍)に甘んじていた。しかしデシエルトの大逃げによる消耗戦の中、重馬場にも怯まず外から脚を伸ばし、ホウオウビスケッツをハナ差交わして重賞3勝目。牝馬の金鯱賞制覇は1995年以来30年ぶりという歴史的な一勝となった。この日の川田騎手の「彼女のリズムで走りながら」という騎乗は、この馬との信頼関係の深さを示していた。
4番人気(単勝8.5倍)ながら金鯱賞の勢いそのままに臨んだG1。後方12番手から直線外に持ち出し、残り400mで川田騎手のゴーサインとともに一気に加速。ゴール前では一時先頭に立ったが、残り100mで同厩舎アルジーヌと馬体が接触するアクシデントが発生。立て直した末にアスコリピチェーノにクビ差差し込まれて2着に終わった。接触がなかったとしても結果がどうだったかは分からないが、「最も近づいた瞬間」だったことは確かだ。
🧬 血統解説 ── キズナ産駒の「万能性」と中距離への適性
血統構成
近親馬:グレナディアガーズ、アストロフィライト|産地:ノーザンファーム(安平町)
父キズナはマイルから中距離にかけて産駒が活躍し、特に東京・中京の長い直線を持つコースで末脚を活かす馬を多数輩出している。母系のHarlington血統はスタミナと底力の源。ローズS(中京2000m)とその後の金鯱賞(中京2000m)で連勝したことは、血統的適性と舞台適性が完璧に一致した結果だ。中京芝2000mでの2戦2勝という実績は、金鯱賞連覇への最も確かな根拠となる。
🏟 金鯱賞連覇への展望 ── 中京2000mで再び証明する
金鯱賞連覇評価:◎◎ 中京2000mはこの馬の「城」、良馬場での真の実力を見たい
中京芝2000mで2戦2勝という実績は、最も明確な「舞台との相性証明」だ。昨年は重馬場での歴史的勝利だったが、今年はどんな条件でも「この馬の本当の強さ」を見せる準備が整っている。
最大の武器:「彼女のリズムで走れた時の末脚」
川田騎手が「彼女のリズムで走りながら」と表現する、このコースでの走り方は唯一無二だ。ヴィクトリアマイルで見せた「一瞬先頭」という瞬発力が中京2000mの直線で発揮された時、連覇の可能性は最も高まる。
G1という夢:「男馬相手にもやれることを証明した先に」
川田騎手が「G1ではなかなか結果が出ていませんが、これから先も楽しみ」と語った言葉には、まだ終わっていない物語がある。金鯱賞連覇を足がかりに、ヴィクトリアマイルやグランプリレースでG1初制覇を達成する日が来るのか──5歳牝馬の挑戦はまだ続く。
「女王の歩み(Queen’s Walk)」という名を持つこの黒鹿毛牝馬は、牝馬30年ぶりの金鯱賞制覇という歴史的な足跡を残した。G1という頂ではまだ届いていないが、川田将雅騎手が「素晴らしい馬体と背中」と言い続けるこの馬のポテンシャルは、まだ発揮し切られていない。3月15日、中京芝2000m──最も得意なこの舞台で、クイーンズウォークはもう一度「女王の歩み」を刻む。

